今住んでいるマンションは、住人同士の近所付き合いが盛んな方だと思う。
人情味あふれる兵庫区の下町で育った私は、昔から近所付き合いというものが好きなので、家を買うときに1番気になっていたのはそこだった。
でも不動産屋さんに「このマンションの近所付き合いはどんな感じですかね?」と聞いたとてご存知のはずはなく、そこについてはイチかバチかの賭けだった。
分譲マンションなのでエントランスなどですれ違えばお互いに挨拶はするだろうけど、それを超えたお付き合い(お裾分けなど)はあるのだろうか?
ましてやここは中央区。
下町の兵庫区とは違って、都会的なあっさりした「挨拶程度の付き合い」も覚悟して引っ越してきた。
あれから3年。
ハロウィンやクリスマスには近所の人が子供と一緒にお菓子を届けに来てくれる。
インターホンの画面にラッピング袋を持った小さい子の姿が映るとほっこりする。
年配の人たちからの「親戚が送ってきた果物」や「人気店で並んで買ったパン」など、お裾分けの文化もしっかりあるのがうれしいし、こちらも旅行に行ったらお土産を持っていく。
私が住んでいるのは築50年のビンテージマンションだから年配の人も多いけど、立地の良さから意外と若いファミリー世帯も多く、色んな年代の人たちとハートウォーミングなお付き合いをさせてもらっている。
いつも身なりに気を遣っている80代のマダムや大学教授だった70代のロマンスグレー紳士は、うちの娘を孫のように可愛がってくれる。
我が家と同じ年頃の子供がいるオシャレな若夫婦や、外国人の旦那さんを持つ聡明な奥さんと小学生のハーフちゃん親子とは、イベントの度にお菓子を渡し合う仲。
こうして文字にすると住人の雰囲気になんとなく中央区っぽさが漂っているし、町内規模ではなくあくまでもマンション内ではあるものの、やっていることは昭和の兵庫区と変わらない典型的なご近所付き合いだ。
改めて考えると、夢にまで見た良好なご近所付き合いが実現していることに、じわっと喜びがこみあげる。
小さい頃、近所の人たちに沢山かわいがってもらった記憶は温かな感覚として心に残っているので、娘にも与えてあげたいと願っていた。
このありがたい環境が当たり前になっている今、ふと疑問に思ったのは、他のマンションのご近所付き合い事情はどんな感じなんだろう?
周りの友人に聞く限りでは「同じマンションに住むママ友とは醤油の貸し借りをしている」という昭和的な情報を1つ得たぐらいで、うちのマンションほど広く付き合いがあるところは無さそうだが、もっと多く聞き込みをすれば他にもきっと存在するはずだ。
ちなみに、うちは古いマンションなので屋上がある。
普段は使われていないのだが、最近「花火大会の日に住人のみんなで屋上バーベキューをしてはどうか?」という案が理事会で出ているらしい。コロナ前は毎年やってたそうだ。
近所付き合いとかめんどくさい人にはこのマンションは本当におすすめできないが、人付き合いで水を得るタイプの私にとっては最高の住処だ。
下町とはまた違う地域社会の在り方を知れた気がする、というと大げさか。
中央区で都会の絵の具に染まったように見えるかもしれない私だが(見えない)、実は隣のおっちゃんがたまに持って来てくれる素朴な「新聞紙に包んだ焼き芋」や「うちの嫁はんが作ったちらし寿司」の大ファンだ。
隣のおっちゃんはきっと下町出身に違いない。
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