滝川高校で臨時講師をしながら夜間大学に通う
現役引退後、翌年の2011年から母校の滝川高校で臨時講師として働き始めた。
公民の教員免許しか持っていなかったので、地理と歴史の教員免許を取りに夜間大学に通いながらの日々だった。
近藤さんはサラッとそう話すが、ストイック過ぎて、そう簡単にできることではない。
一般企業に就職後、滝川高校で常勤講師として野球部のコーチに
2年間、臨時講師をしていたが、その翌年に採用枠が無く本採用に至らなかった為、阪神電鉄グループの阪神コンテンツリンクに就職。
阪神タイガースのカレンダー等を制作するコンテンツ事業の会社で、阪神電車のグッズなどを取り扱う部署で勤務していた。
「よし、これからはこの会社で頑張っていこう!」と思っていたら、2年後に滝川高校から採用枠が空いた旨の連絡があり、2015年から正式に滝川高校の常勤講師となる。
そして独立リーグの選手もNPBの野球選手と同じく「プロ野球選手」に当たるので、高野連から指導者回復の手続きを受けた後、野球部のコーチとなった。
不老監督の跡を継ぎ野球部監督に就任
2017年夏に不老監督の勇退をもって、その秋から36歳で監督に就任。
現役引退後、実に2年刻みで目まぐるしく移り変わる人生の場面も、いつも柔軟に受け入れて対応してきた。
今年の夏の大会を見ていても、投打に噛み合っている印象がある滝川だが、就任当初はディフェンス面を重視していたという。
「四国リーグ時代は守備走塁をしっかりやってたら勝ててたので、守備練習をしっかりやってたら勝てるやろと思ってたら、最初は全然勝てなくて」
そこから打撃練習の時間も多く取るようにしていくと、就任2年目の秋には明石商業と対戦し2-0と接戦で破れはしたものの、強豪チームと良い勝負ができたことで「やり方としては合ってるんやろな」と自信にもなったが、一方で「でも、まだなんか足らんのやろな」と感じた。
いつも「まだなんか足らんと思って」と言う近藤さん。「常にアップデートしていきたいんです。新しいもの好きなんで」と笑う。
特注のノックバット
そんな近藤さんの最大の特徴は、長〜いノックバット。
ハタケヤマの特注バットを使用しているのは、2008年に香川オリーブガイナーズでコーチをされていた元プロ野球選手の勝呂壽統さん(現在は高知ファイティングドックスのコーチ)の長いノックバットを見て「かっこええなぁ!」と憧れたため。
高校野球でもこの長いノックバットを使って少しでもインパクトを与え、中学生に滝川高校を選んでもらえたらという思いもある。
近藤さんはノックがとても上手いが、ご本人は「まだまだです!特にキャッチャーフライはもう少し対空時間を伸ばして7秒にするのが目標です」と、ここでも今後のアップデートを目指す。
チームとしても、練習量を重視する昔ながらの根性野球はそのままに「やらせる野球」ではなく「勝つために選手たちと会話すること」を意識している。
突発で質問デーを設け「なんでも聞いてよ!野球のことじゃなくて人生のことでもええよ!」と部員たちと積極的にコミュニケーションを図っている。
常に情熱と改善意識を持つ指導
近藤さんのやり方が結果として出たのはやはり今年の夏。
「ブロック決勝は東洋大姫路ということで相手に不足はないですし、今年の3年生はその前の冬の練習がちゃんとできたので、これはもう気持ちで行こう!と」
コロナ以降、練習時間が限られている中で、効率的にやるということをとても考えるようになったという。
さらに滝川高校はグラウンドを他の部活と一緒に使っていて、決して環境に恵まれているとは言えないが「俺はお前らの百倍失敗してきてるから!」と選手を励まし、「打てないときもあるよ!4打席連続三振することもあるよ!じゃあそんなときどうする?今やれることやろうよ!打てへんのやったら守ろう!守れないんやったら全力疾走しよう!それでアウトになったなら、ベンチで声出そうよ!」と声を掛ける。
常に選手と同じ目線でありたいという若手監督ならではのパッションと、常にアップデートする改善意識。
一方で、冬場の練習メニューをはじめ不老前監督のやり方を汲んでいる部分も大いにある。
滝川高校の指導者は全員がOB
滝川野球部の山際部長(32)は「不老先生が築いて来られた伝統的な良さはそのまま残し、そこに近藤さんの新しい感覚をどんどん足していってる感じです。まさに温故知新です!」と語る。
また、投手を指導している木脇コーチ(39)は「近藤監督はプレイヤーとしての経験値は抜群。なかなかこれだけキャリアのある高校野球の監督はいないし、これから指導者としての経験も積んでいって両方の経験値が合致した時が楽しみ。山際部長も僕も3人とも滝川出身で不老監督の教え子です。指導者全員がOBというのも珍しいしすごいことだと思います!」
これからの滝川野球部
近藤さんに今後の目標を聞いてみると「目標というか、僕1人でできることでは無いんですけど、野球人口が減ってきているので、野球の楽しさを伝えていくのが僕たちの仕事ちゃうかなと思ってます!」
近藤さんの、監督として、そして野球人としての思いに触れることができて、同じく野球を愛する人間としても滝川野球部の今後が楽しみだ。
今でも絶大な存在感を誇る不老前監督の意志を継ぎ、選手としても活躍したOB監督が後輩たちを導き、群雄割拠の兵庫でしのぎを削っていく。古豪復活の狼煙は上がり始めた。
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