神戸・花隈。
JR神戸駅と元町駅の間にあるこの街は、昔からオールジャンルの食の名店がひしめいており、最近はカフェなどのオシャレなお店も急増中。
そんな花隈のほぼ真ん中に『Ini.kobe』はある。
取材に訪れた日、入口の前に着くと「こんにちは〜♫」と女性の声がした。
見上げると2階の窓から、オーナーのSeiちゃんとスタッフのちーちゃんが、ニコニコしながら手を振ってくれていた。
「か、可愛い!」
もうこの時点で編集長の心はノックアウトされた。早すぎか。
2人の出会い
Ini.kobeは2019年11月にオープンしたゲストハウスで、1階ではSeiちゃんとちーちゃんがクラフトビールがメインのカフェバーもやっている。
中国生まれ神戸育ちのSeiちゃんと、大分出身のちーちゃんは、5年前(2017年)にフィリピンのセブ島で出会った。
英語の語学留学で同じ学校のルームメイトだったのだ。
ところが、Seiちゃんがすぐに学校を変更したため、ルームメイトだったのは3日間だけだったという。
その後Seiちゃんは2ヶ月、ちーちゃんは1ヶ月半のセブ留学の期間に会ったのも、たったの3回。
でも2人はそれ以来、無二の親友となった。
年齢も出身地も仕事も、なにもかもバラバラの2人が、ナゼそんな短期間で心を通わせ合うことができたのか、それぞれの人生をもう少し掘り下げてみよう。
Seiちゃん
Seiちゃんは1990年に中国・福建省の厦門で5人兄弟の末っ子として誕生。
小2の時に神戸に引っ越してきて、中学までは中華同文学校で過ごし、市内の高校卒業後、六甲山ホテルに就職。
そして22歳の時から5年半、旅行会社のHISで働き、社内プログラムで2度、セブに2週間の語学留学に行った経験があった。
普段は日本語を話すSeiちゃんだが、今でも家族間では中国語で会話しているそうで、8歳の頃からそんな生活をしていたため元々語学への興味関心が人一倍強く、英語をもっと話せるようになりたいと、改めてセブに行った時、ちーちゃんに出会う。
ちーちゃん
一方、ちーちゃんは1994年に大分県中津市で3人兄弟の末っ子として生まれた。
昔から建築に興味があり、高校を決める時に「建築系の勉強して、カンボジアに井戸掘ろう!」と思い、大分高専の土木系の学科に入学。
高専で学ぶうちに、更に建築への興味が強くなり、愛知の豊橋技術科学大学で建築の勉強を深めた。
大学4年の時に、海外で建築の仕事をしたいという中学時代からの夢に向けて休学し、バイトしてお金を貯めてからセブへ行ったときに、Seiちゃんと出会う。
たった3日間のルームメイト
「たった3日間ルームメイトやっただけで、なんでそこまで仲良くなったん?」
きっと誰もが思う疑問を、編集長もまず最初に尋ねた。
「ん〜、そういえばなんでだろうね?笑」
「なんかわかんないけど、気付いたらこうなってたよね?笑」
外見も可愛らしい2人が、ゆ〜ったりとした雰囲気でそう言い合っている様は、まるで2匹の愛らしい猫がじゃれあっているようで、見る者の心をホッコリと溶ろかせる。
そんな2人だがIni.kobeは、オープン時からずっと2人でやっていたわけではない。
Ini.kobe 2019年11月 オープン
お互いセブを離れてから、Seiちゃんは、神戸に帰ってゲストハウスのオープン準備。
ちーちゃんは、オーストラリアでのワーキングホリデーを経て大学卒業後、東京で現場監督の仕事をしていた。
Seiちゃんは花隈で、以前は飲食店だった物件に巡り合い、3階建で1階部分がカフェバー、2階から上にはゲストハウスとルーフトップテラスを併設するIni.kobeをDIYで創り上げた。
オープン直後は冬休みシーズンだったこともあり、ゲストハウスは連日満室状態だった。
ところがオープンしてたったの数ヶ月後、あの世界的な大混乱がSeiちゃんにも襲いかかった。
いつも明るくポジティブなSeiちゃんも、宿泊客がゼロの日々が続いた2020年の2月後半からは、さすがに落ち込んだ。
「オーナー業は初めての経験で、すぐに大変なことが起きてしまいました。何も分からなくて、まだ自信が無かったので不安でした。」
それでも1階のバーは、波の合間を縫って営業を続けた。
今できることを常に考えて、全く先が見えない中を、1人でがんばり続けた。
そんなSeiちゃんを神様が見放すわけがない。
少しずつバーの常連客が増えてきて、アドバイスをもらえたり、友達を呼んで来てもらえたりと、色んな人に応援してもらえるようになっていった。
よくよく話を聞いていると、この常連客の中に神戸の名だたる飲食店のオーナーが何人もいて、驚いた。
それはさぞ心強かったと思う。
そして2020年の12月からは、自身のヨガの師匠が向こう1年、Ini.kobeをスタジオとして借りてくれることになった。
「こうして助けてくれようとしてくれる人達がいるのに、ここでがんばらないわけにはいかないと思いました。」
ニコニコしながらそう話すSeiちゃんだが、瞳の奥から意志の強さがしっかりと伝わってくる。
しかし、一向に終わる兆しの無い混沌とした世界の中で、2021年になっても宿泊客は相変わらずのゼロ行進。
一旦は予約受付すらも止めてしまった。
「こんな時に、外国の方や学生さん向けのゲストハウスで相部屋っていうのはもう無理なんじゃないか」と思い、2021年の5月には自分で作った2段ベッドを自らの手で解体した。
そこまでの状態から、一体どうやって今こうしてちーちゃんと笑い合うところまで復活できたのか。
次回に続きます、お楽しみに〜。
※Ini.kobeは現在は宿泊受付を再開しております。
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