編集長コラム第30回 「リアル『阪急電車』」

編集長

阪急電車は、関西の中ではセレブの乗り物とされている。

あの阪神間モダニズム感は、確かにJRや阪神には無いハイソさで(阪神間モダニズム自体は他の沿線にもありますが)、同郷の神戸・下町育ちの友人は、大学時代に阪急電車で通学しているとき「阪急六甲から西宮北口間は、もう街並みがセレブすぎて目を覆いたくなる」などと供述していたものだ。

下町人情の中で育った私は、やはり阪神電車が1番落ち着くし、自分に似合ってると思うのだが、では阪急がツンと澄まして高飛車かというと、そうではない。

少し前に「阪急電車」という小説がヒットして映画化もされているが、あの小説の舞台は阪急今津線だ。

西宮北口から宝塚までの短い路線の中で、色んな人たちの人生が交錯する話なんだけど、私はまさに阪急今津線で、リアル「阪急電車」のような出来事に遭遇したことがある。

厄年が明けて、晴れやかな気持ちで門戸厄神さんにお札を返しに向かっていたときのこと。

まだ赤ちゃんだった娘はベビーカーで眠ってくれていたので、私はここぞとばかりに車内で本をむさぼり読んでいた。

ちなみにその本は「阪急電車」では無かったのだけど、のめり込みすぎて、気がついたら電車は門戸厄神駅に着いていて、私は大慌てでドアに走った。

ドアが閉まりそうなタイミングに、慌てて滑り出ようとしたら、ベビーカーがドアに挟まれかけた。

その瞬間、周りにいた大学生やサラリーマンの人たちが、みんなでドアを人力でこじ開けてくれ、私と娘はなんとか無事に下車することができた。

無論、皆さん、私以上に、子供を助けようとしてくれたのだ。

私と娘が無事ホームに降り立った姿を見て、車内では大学生同士がハイタッチし、サラリーマンはガッツポーズしてくれていた。

まるでトップガンがマッハ10に到達したかのような欧米風のリアクションだった辺りが、やはり阪神間モダニズムの阪急らしいハイカラさだ。

感激のあまり、私は去り行く電車の中の皆さんに向かって深々と一礼した。

すると、女子大生は娘に向かって小さく手を振ってくれ、他の人たちも「良かったね!」という感じで微笑んでくれた。

阪急電車は、セレブの乗り物だけど、人情だってちゃんとある。

それ以来、私はますます阪急派だ。

梅田から帰るときは始発駅になるので、絶対に座れるところも好きだ。

ちなみに、私たち神戸の下町民族がよく使う阪急電車は、新開地から神戸三宮なので、とても阪急沿線と呼べるものではない。

あれは神戸高速鉄道である。

次回コラム
「沖縄への浪漫飛行」

前回コラム
「『その街のこども』だった私たち」

編集長

編集長

神戸を愛し神戸に愛され続けて38年😆👍(つまり38歳)人と喋ることと文章書くことが好き過ぎて、うっかり編集長になってしまったタイプです。神戸及び兵庫県の『人』をクローズアップしたインタビュー記事をメインに、神戸っ子たちのコラムも充実♫ 地元の人にも神戸以外の人にも、軽〜く友達感覚で読んでもらえたらうれしいです😊💓

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP