言わずと知れた神戸の子供服ブランド、ファミリア。
70年以上の歴史を持つファミリアは、昔から阪神間の人々にとっては特別な思い入れがある。
こんな私も御多分に洩れず、小さい頃からファミリアの服をたくさん買い与えてもらってきた。
私にファミリアを買ってくれたのは、父方の祖父母である。
幼い頃は祖父母と同居していて、週末になると祖父母に連れられて三宮や元町に買い物に出かけた。
そしてファミリアに行くと、祖父は、私と弟、そして従兄の服に、毎回高額な支払いをしていたと聞いている。
若くして私を生んだ両親の財力では、到底叶わなかったほどの高価な服を与えてくれた祖父母には、ずっと感謝していた。
ところが、つい最近、祖父の娘である伯母から衝撃的な話を聞かされた。
「おじいちゃんがあの頃ファミリアであんだけいっぱい買うてたんはな、おじいちゃんの浮気癖がひどすぎるのを見兼ねたおばあちゃんが、よその女の人にお金使うぐらいやったら、孫に使わせようと思ってたからやねんで。」
私のファミリアは、祖父母との心温まる思い出だと思っていたのに、祖父の浮気への抑止力だったなんて、めっちゃショックだ。
でも、我が一族らしいブラックユーモアで、嫌いではない。むしろ好きだ。
もう30年以上前に、祖父に買ってもらった私と弟のデニムバッグを、今でも大切に持っている。
高校生の頃は、私たち公立高校の者もこぞってファミリアのデニムバッグを持っていたが、やはり創業者の1人である坂野敦子さんの母校の甲南女子中・高校の「KONAN」と刺繍が入ったそれには、格の違いを思い知らされたものだ。
最近はこれを持った公立の女子高生を見かけることが昔より減ったが、うちの娘(3歳)の時代には、また流行りが復活してほしいと願って止まない。
そしてその時は、また必ず巡ってくるだろう。
娘を授かったときには、ファミリアオリジナルのマタニティマークが欲しいあまりに、マタニティセミナーにも奮って参加した。
初めて買うおもちゃもファミリアの物にしたくて、マスコットも買った。
昨年、娘にデニムバッグとブック入れを購入したのだが、我が子の為に買うデニムバッグは、とても感慨深かった。
時を同じくして生田神社とコラボした御守りも登場し、あまりにも可愛いので早速手に入れた。
ファミリアは永遠に、阪神間の人々の夢であり、希望である。
にも関わらず、私の小学生のときの写真を見た気が置けない友人たちに「あんたの着てるジャンパー、作業着みたいやん!」と大笑いされたことがある。
「失礼しちゃう!これ一応ファミリアやねんで!」と返すと、ますます爆笑され、「せっかくのファミリアやのに、あんたが着たら完全に作業着!」と、みんな涙ながらに笑っていた。
確かに、「毎度!」が口癖の町の社長みたいだ。日本フルハップにめっちゃ応援されてそうだ。
その後、そのメンバーのLINEグループは、晴れて「ファミリアが作業着」と命名された。
私はウケたら何でも嬉しいからいいのだが、未だかつて、これほどまでにファミリアのブランドイメージを傷つけた人間が存在しただろうか。
なんやったら磯上の本社前で土下座しとくので、どうか許してもらいたい。
必要であれば、今も元気に健在の祖父と共に参りたいと思う。
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