nennepan開業まで
東京での修行後、神戸でパン屋さんを開くために帰ってきた。
その時はすでに結婚して子供もいたが、しばらくは実家に住んでお金を貯めた。
ご主人は東京出身にも関わらず、サトコさんの夢を応援し、転職してまで神戸についてきてくれた。
実家で暮らし始めて半年後、たまたま隣の家が売りに出て、父がその家を購入。
「えっ、買ったん!?」と驚きが止まらないサトコさんに、「隣の家の1部屋でパン焼いたらどうや?」と提案してくれたのも父だった。
普段はクールな父であるが、サトコさんのパン作りを、密かに誰よりも応援してくれている。
店舗は構えず、受注販売にすることにしたのは、独自性のある形式にしたかったことと、何よりもロスが出ないこと。そしてシニフィアン・シニフィエで配送作業の経験もあった等の理由からだった。
それを始めるにあたり、web関係のお仕事をされているご主人がホームページの作成を担当してくれた。
サトコさんの苦手な分野は、全てご主人がフォローしてくれている。
そんなご主人には「感謝しかない」という。
屋号に込められた想い
nennepanという屋号には、パンは生地を寝かせて育てるものであり、子育てと同じようにパンを大切に育てる、という想いが込められている。
「ゆっくりねんねしてね」と優しく想いながら、20時間以上も低温でじっくりと生地を寝かせているのは、「小麦の旨味をじゅうぶんに引き出す為」だそう。
ただ、受注販売のデメリットは、名前が知られていないと注文数が少ないということ。
ファーマーズマーケットに出店
最初はそれ以外にも、家の近くの『はっぱや』という地元の野菜をメインに販売するスーパーの前で、パンを売らせてもらっていた。
その後、はっぱやが閉店することになったのを機に、そこの社長さんの伝手でファーマーズマーケットを紹介してもらえ、1年半前からファーマーズマーケットへの出店も始めた。
おかげでファーマーズマーケットに買いに来てくれるお客さんと、ホームページから注文してくれるお客さんとを、別々に持つことができた。
ファーマーズマーケットに出店する前日の金曜日は、普段より大量に焼くので、私が取材に行った日より、もっともっと大わらわだそうだ。
編集長はもっぱらファーマーズマーケットに買いに行く派だけれど、今回の取材を通して、今まで気軽に買いに行っていたことを申し訳なく思うほどの大変な作業を、サトコさんはたった1人でしていた。
nenepanのやりがい
パンを焼くのは金曜日だが、木曜日は朝の3時半から午前11時まで、厨房でパン生地の仕込みをしているという。
そこから具材の作成や、生地の分割成形。
水曜日は仕込みの仕込み。
主に計量などを行う。
火曜日はパソコン作業。
金曜日しか焼いていないのに、他の日もこんなに様々な作業をしていることが、初めて分かった。
それでも、コロナが始まりご主人がテレワークになってからは、家事や子育ての役割分担ができるようになり、随分と楽になったという。
「こんなに忙しい生活を続けられるモチベーション、やりがいって何?」と尋ねると
「美味しいものを作るのが好きやから、色んな人とその美味しいものを共有できて、喜んでもらえる声が返ってくるのが何より嬉しい!」
ほぼ徹夜のまま夕方を迎えているというのに、はじける笑顔を見せてくれた。
nennepanのこだわりは、体が喜ぶ材料を使用し、もちろん無添加。オーガニックにも力を入れている。
高加水なので消化にも良く、お年寄りや小さいお子さんにも食べてもらえるようなパン作りを心掛けている。
ちなみに編集長はnennepanのカンパーニュダマンドの大ファンだ。
他のパン屋さんでもダマンドを見つけると必ず買うのだが、nennepanのダマンドと全然違っていて不思議だった。
サトコさんにそう伝えると、ダマンドはクロワッサンで作るのが主流だそうで「うちのはカンパーニュで作っているのが他店との違いかなぁ。編集長はカンパーニュで作ったダマンドが好きなんやろな。」と、冷静に分析された。
休日の過ごし方
休日には、家族でキャンプや山登りなど、自然の中で過ごすことが多いという。
子供たちと自然に触れてエネルギーをチャージし、そしてまた体に良いパン作りに励む。
長時間寝かせた生地から、眠らずに作られているnenepanのパンには、サトコさんの優しい母性が、たっぷり込められている。
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