小学生の時。ミニ四駆ブームがきていた。例にももれず少年松本亮もミニ四駆に夢中になった。
まずはマシンを買う。それからモーターとかいろんなパーツを少しずつ買っていって自分のミニ四駆をカスタマイズしていった。見た目、機能性ともに満足のいくミニ四駆を作った。
そして完成させて気がついた。走らせるコースがないことを。家で走らせてもすぐに壁に当たる。颯爽と走る自分のミニ四駆の姿が見たい。
ミニ四駆の本体は六百円。モーター等の各種パーツも数百円。でもコースはしょぼくても数千円、立体交差とかしちゃうやつは一万円以上だった。
少年松本亮は知っていた。自分の家が裕福ではないことを。おもちゃとかゲームを何でも買って貰える環境ではない。
それでもどうしても自分のミニ四駆をコースで思う存分走らせたい。
自分の誕生日が12月、一つ年下の弟の誕生日が11月、そしてクリスマスも12月。弟も巻き込んで誕生日プレゼント×2、クリスマスプレゼント×2の合計4回分でミニ四駆のコースを買って欲しいとお願いした。
熱意は伝わり他のものは買わない約束でミニ四駆のコースを買ってくれることになった。
おもちゃ屋さんで見つけた憧れのコース。嬉しくて仕方なかった。
おばあちゃんと弟と一緒に隣町のおもちゃ屋まで歩いて行った。薄暗い道が明るく感じるほどに心は踊っていた。
コースの現物を見たおばあちゃんは予想以上の値段に一瞬困惑した表情を見せていたけど買ってくれた。
駅前のさびれた軽食屋でたこ焼きを夕食にして、大きな箱と大きな喜びを抱えて家路についた。
家に着いた少年松本亮は早速大きな箱を空けてミニ四駆のコースを組み立てようとした。
家が狭すぎてコースは組み立てられなかった。
そうして俺のミニ四駆ブームは終わりを告げた。
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