第14回 島根、喫茶店のマスターが神戸に愛を込めて

ココロの兄貴

現在小学5年生の我が家の三女は、この春になるまでの3~4年生の間は「健康優良『不登校』児童」。
イジメがあったり環境が悪かったというわけではなく、「ワタシ、そもそも学校というものが ちょっとダメかも・・・」という、単に「集団生活」というモノが出来ないタイプの子供である。

振り返ってみれば、保育園の時もイベントというイベントは全て拒否。お友達とは仲良く遊ぶし、 先生に迷惑をかけるという事も多くはなかったのだが、「みんなでしましょう」という事に拒否 感があるようだった。

それがこの春から、島根の山奥の小学校から、島根のもっともっと更に山奥の全校生徒13人の小学校に転校することが出来、おかげさまでそれ以来なんとかかんとか小学校に通えるようになれた。

が、やはり「勉強の遅れ」というものは避けられない。
本人もそれを毎日ヒシヒシと感じるようで、「ワタシ、お勉強できない子なのよね」と言い出す始末で、せっかく学校に行けるようになってきたのに徐々に自信を失いつつあるのがわかる。

中でもとくに漢字が苦手だという。学校に行けてなかった3~4年生の時に習うはずだった漢字が全然読めないらしい。
なるほど、みんなの前で音読する時に恥ずかしかったり情けなかったりするんだな。
そんじゃあ、その漢字を取り戻そう。
ちょろいもんだ、パパに任せとけ。失われた時間も自信も絶対に取り戻させてやる。
なんにせよ、こういった事には何か「目標」が必要。
姉である次女はけっこう上手にギターを弾くのだが、弾き始める前にまずは「発表会の日」を決めた。
発表会の日が決まってしまえば、もうやるしかないのだ。
結果、今では楽譜さえあればなんでもこなす程に上達しているのだが、それは間違いなく発表会という目標があったからだ。

キッズに限らず、我々オジサンオバサンだって何か目標がなければ「最初のゴール」にはたどり着けない。
だいたいこういうものにはゴールはないが、それでもまずは小さな階段をよじ登る必要がある。
そこで、三女には「日本漢字能力検定」を受けてみようと提案してみた。
ちょうど我が家は長女と次女がW受験イヤー。お姉さんたちも頑張るし、お前も受験してみようぜ、と。
最初は「え?ワタシ試験受けるの?」と戸惑ってはいたが、その場でネットでさっさと申し込み。これで残り時間は約2ヶ月。
家内もそんな事して大丈夫なの?と心配していたが、大丈夫。失った自信は、必ず取り戻させて みせる。
と、そこからは俺と三女の二人三脚で日々漢字練習。 高いハードルは必要ない。今欲しいのは漢検7級、小学4年生レベルの漢字能力。
まずは今の立ち位置を正確に見定め、それからテスト本番までの戦略を建てようと漢検の過去問にチャレンジしてみた。
200点中、38点。なるほど、これだと音読の時に悔しい思いをする事になるわな。
しかし何も案ずる事などない。ここからは、面白い事ばかりが起きていくぞ。

こんなもんはゲームだ。前回よりは高い点を取れば、どんどん楽しくなっていく。間違えたところを直し、もう一度過去問をやれば、さっきよりは丸が増える。
次の日も同じ。新たな過去問を渡し、点付けし、間違ったところを直す。 ただ、これだけ。
そのうち三女の方が夜の漢字テストを楽しみにし始めて、俺が仕事の合間に予習するようになり、間違えた所に対しては以前よりずっと悔しそうにする。
この頃からは、もう俺が居なくても自分1人で漢字練習をするようになっていた。
そして、本番まであと3日というところ。 そこでようやくたどり着いた、今回の予想問題200点。
ここまでよく頑張った。「いや、まだまだ不安。もうちょい頑張らないと」らしい。いいね。
本番当日。俺はもう何もすることは無い。
試験を終えて会場から出てくる三女は「緊張したわ~」と、人生初の受験にお疲れ気味ではあっ たが、その顔は間違いなく「ある自信」に溢れていた。
漢検自体は、受かっているには越したことはない。しかしそれよりも、「ワタシ、やりきったわ。 やったら出来るわ」という自信を取り戻してほしかった。
が、どうやらそれは達成できたようだ。
「パパ。ワタシ、漢字得意かも」。
な、言っただろう?

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編集長

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神戸を愛し神戸に愛され続けて38年😆👍(つまり38歳)人と喋ることと文章書くことが好き過ぎて、うっかり編集長になってしまったタイプです。神戸及び兵庫県の『人』をクローズアップしたインタビュー記事をメインに、神戸っ子たちのコラムも充実♫ 地元の人にも神戸以外の人にも、軽〜く友達感覚で読んでもらえたらうれしいです😊💓

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